BWJ Reconnaissance Office

 何気なく覗いたツイッター。
 タイムラインに表示された、一つの呟き。
 通勤途中の電車内で、衝撃が走った。

 『今日またブラジャーすんの忘れて会社行くとこだった』
 
 たった30文字。
 携帯の画面に表示されたそのたった30文字弱の言葉に、世界が、揺れた。

「……落ち着け。落ち着くんだ。」
 
 自分自身に語りかけながら、携帯のキーを押し文字を打つ。
 どうしても確かめなければならないことがあった。その返答如何で、未来が変わるという確信があった。
 返信ボタンを押す親指が震えた。

『そこでいわれる「また」というのは「以前会社にブラしないでいったことがある」ゆえに「また」なのですか?』

 返事は、YES。

 ブラワスレ女子偵察局(BWJ Reconnaissance Office:BRO)誕生の瞬間だった。

 通勤中暇だとよく人のことをk……いや、違うな。言い直す。通勤中暇だとよく女性のことを舐めまわすように観察するのだけれど、未だかつて日本でこの人ノーブラじゃね?と思うような乙女を見たことがない。(お前の言う観察とは一体どこを観察することなのか、 と思った方。そこは推して知るべし。)だから、今までそんな事象(最早事象と言っていい)が存在するとは思わなかった。

 けれども。

 けれどもだ。

 今日、知ってしまった。この日本には、ブラをつけ忘れ通勤してしまう、うら若き乙女がいることを。そんな女子が確かに存在するという、どうしようもなき事実を。

 これを読む皆様も、おそらくテレビや何かでツチノコやネッシー、ビックフットチュパカブラ等々のUMAを見つけ出さんと苦心する人間たちを見たことがあると思う(徳川埋蔵金でも可)。あれら作業を行う人間たちは、番組が終盤に進むにつれどんどん顔から精気を無くしていく。それほどまでに、UMAのような存在を探し求めることは精神力を消耗する作業なのだろうか?

 否。

 それは、「いないかもしれない」からである。(ネムイ調べです)

 そもそもの大前提からして既に揺らいでいるのである。その体を立つ足を支える地盤が揺らいでいる状態では、通常の状態よりも疲労や摩耗が激しいことは想像に難くないだろう。
 今までは、BWJ(ブラワスレ女子)もその一つとされていた。UMA、都市伝説、怪異……最早半ば伝説として語られた。そして幾人もの男たちが、あるともしれぬBWJ(ブラワスレ女子)を追い求めては、疲弊、摩耗しその希望を散らして言った。

 けれども、「BWJ(ブラワスレ女子)」は存在する。この、現代日本に、間違いなく、存在、する。

 おわかりだろうか。

 これは、希望である。

現代日本に淀みとどまった絶望色の空気に差す一筋の光、幾人もの男たちの胸に眠るロマンを呼び覚ます、希望の鐘だ。

 BWJ(ブラワスレ女子)という名称は、BWJの特徴に鑑みて、「抑圧からの解放」という意味を持つようになった。

 我々BRO(BWJ偵察局)は世間から冷遇され続けてきた。幻影を追い求める愚か者、現実と虚構との区別をつけられぬ堕落者……。
しかし我々はその評価を甘んじて受け入れてきた。そして世界中の同胞達はそれに屈することなく、日夜不断の努力を重ねた。
それが今日、報われたのである。

 立ちあがれ、兄弟よ!

 希望を捨てず、目を凝らせ!

 真実は、常に我々と共にある!

 今日という日は、我々にとって、

 BWJ(抑圧からの解放)の第一歩である!

冒頭ふざけて変な風にしたら盛り上がってこんなことに。