1985

 1Q84_Book3読んだので感想。

 Book1、Book2、Book3のうちどれがよかった? と問われたら、 Book3だとすぐに断言できる。(当然、Book1、Book2あってのBook3ではあるけど)

 個人的に、物語の解釈について話をするのが得意ではない。物語の解釈なんて人ぞれぞれあっていいし、そこから何を読み取ろうと自由と言えば自由だとも思うから(そうならざるを得ないという意味でしかない)。だから、その個人的解釈を書くことにちょっとだけ抵抗がある。いや、あった。

 でも、書きたい、と思った。書こうと思った。

 そして、それに抵抗を感じる必要など、無いのだ。

 なるべく読む人に意味が通じるように書くつもりだけど、それを、理解してもらえる自信は、余りない。

 でも、それでも書く。

 そこに、意味は、ある。



 Book3 は、各章ごとにメインキャラクタが定められており、そのメインキャラクタの視点で語られる、という構成になっている。

 メインキャラクタは、天吾、青豆、牛河の三人(でも多分、主人公を一人にしろっていったら多分、青豆だろう)。

 Book3は巷で「恋愛」という言葉で語られることが多いように思う。そんなちゃんと色んな書評を読んだことがある訳じゃないけれど、読書メータでさらっとコメントを流し読んだ限り結構あった。

 確かに、今回のBOOK3において「恋愛」は一つの大きな要素として描かれているし、その「恋愛」というのはこの物語において非常に重要な意味をもっているとは思う。でも、個人的に、1Q84を「恋愛」の話だとするのには抵抗がある。
 つまり、そうは思えない。

 自分にとっての1Q84は、孤独と向き合う物語だった。

 この話は孤独と向き合う人間の姿を、形を変えて描き出している。主には、孤独と向き合った二人と、向き合わなかった一人を描くことで。

 その三人と関わる様々な登場人物たちにもそれらは見える(そういう見方で見てるからそう感じる、というだけかもしれないけれど)。例えば青豆と関わりのある「タマル」もその一人だと思う。Book3には名前としてしか出てこないが、「リーダー」もそうだろう。他にも、フカエリ、老婦人、大塚環、中野あゆみ、編集者の小松、天吾の父……。それぞれがそれぞれの孤独を、問題を抱えている(いた)。そして、それぞれの向き合い方があった。

 そうした様々な人々がいて、それら人々と関わる三人がいて、そして物語は一つの結末に向けて収束していく。

 この物語は、孤独は克服できる、と強く訴えているように思える。肯定はきっと得られるのだと、そう伝えようとしているように思える。例えどんな問題―― 例えば家族の問題や何か――があっても、それは乗り越えられるのだ、と。決してそれを、必ずとは言っていない。けれど、そういうことは起こり得るのだ、と可能性を示している。

 だから自分にとってこの1Q84という物語は、孤独と向き合う物語なのだ。

 そして、それを克服せんとする物語だ。

 そう思いながら、読んだ。
 ら、
 泣いた。



 1Q84のBook3を読んだ人が、こんなことを書いていた。

村上春樹はまだきっと何かを伝えたくて、
 おっさんになっても1Q84とかってああやって書いてんのかなあって』

この本読んだら、そうなんじゃないかって思ってしまった。1973年のピンボールを読んで思ったことが、本当にそうなんじゃないかと思ってしまった。

 当然、村上春樹がそれを伝えたかったのかどうかなんて自分には解らない。でももし、自分の思ったことが村上春樹にとっての伝えたいことだったとしたら。

 それを思うとそれだけでまた泣ける。それに、何よりも心が震える。今これ書いてて泣けてくる。ノルウェイの森の結末を思い出して、そして今回の結末を思って、彼がそれを今も文章として物語として書き続けていることに、ただただ圧倒されるし、そして少しだけ力を貰う。

 何故なら、それは自分を肯定してくれるから。そして少しだけ背中を押してくれるから。

 個人的に1Q84にもう続編は要らないなあと思う。ここからは、読んだ人それぞれが、それぞれの『1985年』を迎えたらいいんだと思う。
 当然、それは絶対に迎えられる訳ではない。『ねこのまち』から帰ってこれない人もいるように。

 けれど、きっと『1985年』は来る。それぞれの『1Q84』があり、そして『1985年』は来るのだ。誰もに、その可能性がある。

 どんな孤独が、その原因が、問題があっても。

 息をしている限り。息を止めない限り。諦めない限り。

 それがどれだけ難しいかなんて解ってる。でも、そう言いたい。そう、言い続けたい。

 そして、それにきっと意味はある。



 結局感情的になった。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1