読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

二次創作

 最近アニマスをずっと繰り返し見ていたのですが、ふと思いついたらどうしても書きたくなってしまったので生まれて初めて二次創作というものを書いてみました。

 アニメ25話、765プロAllStarLive2ndのあとにあったかもしれないお話。アニメのネタバレを大いに含むので注意です。

――――――――――――――――――――――――――――――

 無事にライブを終えた私たちは、スタッフを交えた簡単な打ち上げのあと一度事務所へと戻った。社長から労いの言葉と、プロデューサーがライブ後に戻った病院でこってりとしぼられたことを律子さんから聞いて(律子さんは音無さんからのメールで聞いたそうだ。しっかりと怒られているプロデューサーの画像が添付されていた)ひとしきり皆で笑った後、今日のところは解散となった。

 駅までの道を皆で歩いていると、自然と春香と二人になった。皆のつくる集団と少しだけ離れて、春香と二人、歩く。

「千早ちゃん。なんだか今日が終わっちゃうの、寂しいね」

「そうね……」私は言って、前を歩く皆を見る。「なんとなく、皆もそう思っているような気がするわ」

 駅までの道を歩く速度が妙に遅いのはきっと、疲れているという理由だけではないと思う。きっと、皆離れがたく思っているのだ。今日ここに至るまでにあったことを思えば、そう思うのも仕方ないのかもしれない。

 春香と二人、しばらく前を歩く皆を見ながら黙って歩いた。一月の夜の空気はぴんとして、吹く風は冷たい。帰り道が一人でなくてよかったな、と思う。皆と離れがたいのは私も同じだ。

「あのね、千早ちゃん」

「なに?」

「今日ライブの前に美希と話したの。前にアイドルってなんだろうねって話したことあったよね」

「ええ、社長がUnamelaに連れて行ってくれた帰り道ね」

 少し迷って、扉の外で偶然にその話を聴いていたことは黙っていることにした。春香の口からもう一度聴けるなら、あの言葉を私はもう一度聴きたい。

「あのとき、千早ちゃんと美希はちゃんと答えを持ってたのに、私だけなんだかハッキリしなくて……でも今は自信を持って言えるって、美希に言ったの。私は、みんなと同じステージに立つときが一番楽しいって。ファンのみんながいて、765プロのみんながいる。その瞬間が一番アイドルなんだって思うって」春香はその時のことを思い出したようにくすりと笑った。「実に春香らしいの、って美希は笑ってた」

「私も、とても春香らしい答えだと思うわ」私は言う。「春香らしくて、素敵な答えだと思う」

「えへへ……ありがとう」春香はピンクのマフラーに顔を埋めるようにして言った。ほんのり顔が赤いのは寒さのせいだけじゃないだろう。

「美希はそれでいいと思う、って言ってくれた。私もそれでいいんだって思ってる……でもね、千早ちゃん。私わかってるんだ。いつまでもこのままではいられないこと」

「春香……?」

「ねえ千早ちゃん覚えてる?私たち765プロに入ったときのこと。私たちまだ高校一年生だったんだよ。あれから色んなことがあったよね。みんな1つづつ学年があがって、律子さんがプロデューサーになって、伊織と亜美とあずささんは竜宮小町になって、みんなだんだんと仕事が増えて……」

 その後は言葉にしないでも分かる。ほんのついこないだの話だ。そしてその先に今、私たちはいる。

「変わってほしくないって思うこと、たくさんあるけど……それでもやっぱり変わらないものはないんだなって、今日私実感したの」そう言って春香は私の顔を真っ直ぐに見た。「だって私、千早ちゃんのこと好きだったけど、一年前より今のほうがずっと千早ちゃんのこと好きだもん」

「ちょっと春香……!」

「あ、照れた。もう、千早ちゃんは可愛いなあ」

 春香はいたずらっぽい笑みを浮かべて、嬉しそうに私を見ている。悔しいけれど、顔が熱い。

「でもね、そうやって照れる千早ちゃんも、一年前ならきっと見れなかった。千早ちゃんだけじゃなくて、みんなもそう。私ね、一年前よりずっと、みんなのことをたくさん知ったし、その分だけ、みんなのことをもっと好きになったよ。だからね、私、みんなと一緒に同じステージで歌いたいって、前よりも強く思うの」

 春香は眉を八の字にして、困ったような顔で笑った。

「でも、いつまでも一緒にはいられない」

 春香の口から出たその言葉に、私は思わず立ち止まった。

 『いつまでも一緒にはいられない』。それは当たり前のことだ。私たちはアイドルだから、誰よりもそれを知っている。アイドルは人気稼業だ。どんどん新しいアイドルが出てきて、私たちはいずれ歳を取っていく。私たちは、ずっとアイドルではいられない。いつまでも光ひかるステージの上にいられる人は、ほんの一握りだ。そんなことは、今さら誰かに言われるまでもなく、ここにいる誰もが分かっている。けれど、他でもない春香が言うその言葉には違う重さがあった。私は泣きたいような気持ちになって、すがるように春香の背中を見る。

「でもね、千早ちゃん。私思うの。いつか、いつか今が思い出になってしまうなら、そのとき思い出の中のみんなが笑っていてほしいって。ファンのみんなも、765プロのみんなも」

「春香……」

「だから私そのときまで、今を精一杯がんばろうって、たくさんたくさんみんなと笑おうって決めたの」言って、春香は振り返った「それが、今の私の夢」

 ずっと覚えていようと思った。今、振り向いた時の春香の表情を。いつか、忘れてしまうのだとしても、それでも覚えていたい。あの瞬間の春香の笑顔を、私は忘れたくない。

「私も、私も春香が、皆が好きよ。一年前より、今の方がずっと」

 叶うことのないと知って、届くことのないと知って、それでも人は永遠を願い、祈る。

「千早ちゃん……」

 きっとその願いが、祈りが、この瞬間を輝かせる。

「ちょっとー!千早さん、春香ー!二人とも遅いのー!!」

「あ、美希が呼んでる!だいぶ話し込んじゃったね」春香は言って笑う。「千早ちゃん、いこう?」

 そうして積み重なった瞬間瞬間が、描いた未来を今に変える。

「あ、春香、あんまり急ぐと……」

「わわわっ」

「あぁ、もう……」

 すべてが移り変わり、流れ流れていくこの世界だけれど。

「春香、ほら掴まって」

 この一瞬一瞬の中に、きっと永遠はある。

「えへへ……千早ちゃん、ありがとう」

 私はそう、信じたい。